[夏帆] 16歳・夏帆、本格恋愛映画は「テレ」との闘い
【ヒューマン】16歳・夏帆、本格恋愛映画は「テレ」との闘い
卓越した演技力で、次世代のホープと呼び声高い、女優の夏帆(16)。昨年はさま
ざまな映画賞で新人賞を獲得。同世代の中でも群を抜く表現力は、公開中の映画「砂時
計」(佐藤信介監督)の中でも光っている。まさに天職かと思いきや、「私、自分の演
技に自信がないんですよ。撮影が終わるたびに、これでやめようかと思って」。えぇ!
? 意外な答えが返ってきた。
(ペン・古田貴士 カメラ・寺河内美奈)
◇
インタビュー中も、笑うときは大きく口を開けて、本当に楽しそうに笑う。悩むとき
は眉間にしわを寄せて、「う-ん」とうなるように悩む。
「表情が豊か? そうですか? そんなこと言われたの、初めてです」
身を乗り出して聞き返してきた。いやいや、ほんと、天職なのでは?
「う~ん…、でも私、自分の演技に自信がないんです。毎回、撮影が終わるたびに、
これでやめようかと思っていて…」
意外な発言だ。
小5のときにスカウトされ、芸能界入り。「見る側だと思っていた世界。あまりのめ
り込む気はなかった」という女優業だが、昨年の初主演映画「天然コケッコー」で主演
の“重さ”を肌で実感したことなどを機に、「女優の仕事を楽しいと感じるようになっ
た」と大きく成長した。
その反響は自身が驚くほど大きかった。みずみずしい演技は見る者の心を打ち、日本
アカデミー賞をはじめ、さまざまな新人賞を獲得。「あれは“天コケ”という作品だっ
たから、とれただけ」と戸惑ったが、周囲は夏帆を持ち上げた。そんな期待が今度は考
えすぎてしまう性格に災いし、不安やプレッシャーに繋がったよう。
もともと1つのことに集中するタイプ。
「勉強との両立なんて、大変。2つのことをいっぺんにできないんですよ。撮影の合
間に勉強なんて、とてもとても」
そうした不安も大きかったのだろう。現在高校2年生。だんだんと周りが進路につい
て考え始める中で、自分だけが違うことをしている焦りもあったようだ。撮影中、自分
は本当に女優を一生の仕事にするのかと考えていると、「なんか、つくづく女優って、
私に向いてないな」と感じるようになっていった。
だが、持って生まれた才能を映画界は見逃さない。今年に入り、すでに主演級の映画
が3本も公開。その確かな表現力は、さまざまな感情表現を要求される恋愛映画にもピ
タリとハマった。
映画「砂時計」は、累計700万部を突破した漫画家、芦原妃名子さんの同名漫画が
原作。
「本格恋愛映画は初めてだったので、すごいテレとの闘いがありましたね。セリフだ
ったり、そういうシーンが恥ずかしくて」と振り返るが、共演者からは、余裕でこなす
演技に、“さすが夏帆”との声が飛び交った。
本人に伝えると、「えぇ~、ウソだぁ(笑)。余裕を装ってたんですよ。口数をあえ
て少なくして、普通でいようって。そうしないと、恥ずかしくて頭が真っ白になっちゃ
うんだもん」
顔を真っ赤にしたが、そうした新たな経験は、また1つ、女優を続ける楽しさを知る
きっかけとなったよう。
「撮影が終わると、すごい良かったな、やっぱりもうちょっとやりたいなと思う自分
がいたりして。結局やめようとか言っててもやめられないんだろうなと思いますね。不
思議ですよね。やっぱハマってるのかなぁ?」
今でも自分に自信は持てず、撮影中は、「これで最後にしよう、やり切るぞ」と考え
る。だが、そうした思いで取り組んでいるからこそ、逆に演技に魂がこもる。
「5年後の自分? 想像つかないですね。だって5年前の自分が想像していた今の自
分も、きっと違うと思うから。でも結局女優は続けてますよ、きっと」
砂時計の中で過去(上)から未来(下)へと流れる砂のように、ゆっくりと、まっす
ぐに成長を続けている夏帆。多感な時期、不安になることは多いが、過去の経験が将来
の自分に繋がっていくことを、なんとなく実感し始めた。「ほら、過去が未来になった
よ」。劇中で砂時計をひっくり返したときにつぶやくこのセリフは、きっと自身の胸に
も強く響いたことだろう。
★結婚は「10年後ぐらいには」
「砂時計」は、初恋の人を一途に思い続ける純愛を描いた感動作。
「やっぱ理想ですよね。初恋がこうしてずっと続くのって、すごくうらやましい」と
乙女心をのぞかせたが、束縛は嫌なようで、「私もあんまりしたくないし、されたくな
いですね。うれしいなと思うぐらいだったら、いいんですけど」と、こういうところは
“都会ッ子”らしい。
結婚は「10年後ぐらいには」と告白。ちなみに劇中と同じ遠距離恋愛の経験を聞く
と 「それを聞くんですかぁ? 内緒です」と突然大笑い。これは怪しいと思ったが、
「なんでですか(笑) 突っ込みますねぇ。内緒です」。結局、最後はかわされた。
■夏帆(かほ)
本名非公表。平成3年6月30日、東京生まれ。小5のとき、東京・原宿でスカウト
され、芸能界入り。ティーン向けファッション誌「ピチレモン」などでモデルを務め、
16年に日本テレビ系ドラマ「彼女が死んじゃった。」で女優デビュー。同年、宮沢り
え(35)、蒼井優(22)らを輩出した「三井のリハウス」のCMで11代目リハウ
スガールに抜てきされ、注目を集めた。昨年は「天然コケッコー」で映画初主演。今年
は「砂時計」のほか、「東京少女」「うた魂♪」など出演作が相次いで公開されている
。1メートル64。
■「砂時計」
両親の離婚を機に、母と島根に引っ越してきた杏(夏帆)だったが、まもなくして母
が自殺。そんなとき優しくしてくれた大悟(池松壮亮)と付き合うようになる。だがそ
の後、杏は父のいる東京へ行くことに。母にもらった大切な砂時計を大悟に託し、東京
へと向かう杏だったが…。物語は中高生時代と現代に分かれており、現代の杏は松下奈
緒(23)が演じている。
http://www.sanspo.com/geino/top/gt200805/gt2008050400.html
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