[情報] 2010/11/02 ナタリー特集 Power Push
初ベスト盤「いきものばかり」に込めた 4年8カ月の輝くヒストリー
老若男女に愛されるポップバンドとして確固たる地位を築き上げたいきものがかりが、
メジャーデビューから約4年8カ月の歴史を総括する初のベストアルバム「いきものばか
り~メンバーズBESTセレクション~」をリリースする。
収録されるのは、シングル曲はもちろん、カップリング曲やアルバム曲、さらには既発
曲のリアレンジ&再レコーディングバージョン、初音源化曲、そして初お披露目となる
新曲まで、メンバーが自信を持ってセレクトした全31曲。幅広い音楽性を持ついきもの
がかりの魅力を全方位的にフォローする最高の内容だ。
目前に迫った初アリーナツアーのリハーサル中だという3人に、輝かしいマイルストー
ンとなるであろう本作について話を訊いた。
取材・文/もりひでゆき
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3人の選曲が8~9割かぶっていた
──今回の初ベストアルバムを単純にシングルコレクションにしなかった理由から聞か
せてください。
水野良樹(G) 今までオリジナルアルバムには手を出さなかったけど、ベストだった
ら聴いてみようかなっていう人がかなりの数いるだろうなっていうことで、初めていき
ものがかりのCDを手に取る方にどんなグループなのかが端的にわかる内容がいいんじゃ
ないかなって思ったんですよ。
山下穂尊(G) うちは3人とも曲を書くので、シングルとかカップリングとかアルバム
曲とかっていう垣根を取っ払って、一番いいバランスを考えたらこの選曲になったんで
す。
──レパートリーが多いだけに、選曲は大変じゃなかったですか?
吉岡聖恵(Vo) 最初にメンバーそれぞれが候補曲を選んできたんですけど、意外なこ
とに8~9割ぐらいはかぶってて。
水野 言い合わせたわけじゃないのに、あぁやっぱりそれを選んでくるか、みたいな感
じがありましたね。そこらへんでブレてなかったのが単純にうれしかったです。
吉岡 で、残りの部分をどうするかで悩んだ感じですね。例えばアップテンポな曲だっ
たら、これとこれはちょっと同じ部類のところにいるから、こっちはごめんなさいとか
、そういう引き算のほうが難しかった。まぁでも、基本的には取っ組み合いとかにはな
らずに(笑)。
水野 普段もならないけどね(笑)。
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ブレずにやってこれたことを表す選曲
──各ディスクとも、収録可能な時間をめいっぱい使ってますよね。
吉岡 そうなんですよ。作業の最後のほうで、それぞれのディスクに4分半くらい時間
が余ってるよってことがわかったんで、そこから、一旦ごめんなさいした数曲たちをも
う一回オーディションにかけて入れたりもしたんです。もうほんとにギュウギュウまで
入れようと思ってたんで。
──選曲で大事にしたのは、やはりいきものがかりが持っている楽曲のバラエティ性で
すか?
水野 そうですね。アップテンポの曲だけになってしまっても良くないし、バラードだ
けになってしまっても良くないし。あとは、活動してきた中で自分たちなりの曲のカテ
ゴリーみたいなものがいくつかあるんですよ。例えば「ブルーバード」とか、今回は入
ってないですけど「ホタルノヒカリ」や「HANABI」だったりっていうタイプのカテゴリ
ーとか、「くちづけ」「ひなげし」「秋桜」みたいなタイプのカテゴリーとか。それを
うまく分担して出して、自分たちの武器をすべて見せるってことにはすごく気を使いま
したね。
──これだけの曲数が並んだ作品を眺めてみて、何か感じることはあります?
水野 よく作ってきたなっていうところですかね、率直な感想としては。ただ、作り手
としては、そのときどきのレコーディング風景なんかの思い出があるんですよね。例え
ば「うるわしきひと」だったら吉岡が歌入れで困ってたなとか(笑)、「ノスタルジア
」だったらインディーズ時代のライブハウスの光景が浮かんできたりとか。そういうち
ょっと振り返るみたいなことは頭の中ではありましたね。
──バンドとしての変化を感じる部分はないですか? 逆に変化していないことが見え
てきたりもするとは思うんですけど。
山下 結成から11年やってきてるんですけど、各時代の曲をちゃんと入れられたってい
うことはブレずにやってこれたっていうことだと思うんですよ。いろんなことをやって
はきたけど、この曲はもう入れられないだろうっていう曲はなかったから。先月ぐらい
に作った新曲から、かたや10年前に作った曲も入ってますからね。それがアルバムとし
てちゃんと収まったってことは、イイ意味で変わってないというか。それに安心したと
ころもあって。一方では、曲作りという意味で、いろんな(タイアップなどの)お話を
いただいて作ることができるようになった点はありますね。柔軟に対応できるようにな
ったのは、成長した証拠かなって気がしています。
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自分だけのことにとどまらないような曲を書いてきた
──歌に関してはどうでしょう? 全体を通して聴いたときに、作られた時期はさまざ
まですけど、すべてが違和感なく並んでいるようにも感じたのですが。
吉岡 そうですね。「SAKURA」なんかは初々しい感じがするのかなと思ってたんですけ
ど、今回改めて聴いてみたときに意外と声がハスキーだなとか思ったり(笑)。ただ、
デビューした頃っていうのは必死だったとは思うんですけど、曲の世界観を伝えられる
歌とはどういうものなのかっていうことは最初から意識して取り組んでいたので、そう
いう姿勢は変わってないと思うんですよね。曲ごとに声を変えていくっていうよりは、
パッと聴いた瞬間に「あ、いきものがかりじゃん」って言ってもらえるように、統一性
を持った歌い方をずっとしてきたので。
──確かにそこは一貫してますよね。あと、曲が持っている世界観に関して言えば、常
にいきものがかりは日常に寄り添った曲を歌っているなぁと、改めて感じたんですよ。
だからこそ、さまざまなシーンに溶け込む存在になっているんじゃないかなと。
山下 日常っていうのは確かにキーワードかもしれないですね。社会的なメッセージを
込めたりっていう感じではあんまりないんで、僕らは。こんな恋愛が、こんな生活があ
ったらいいなとか、そういう些細なことから曲を書いていたりするので。
水野 例えば僕らが社会的なメッセージを曲にしたとすると、それってすごく限定され
たものになってしまうと思うんですよ。日常ではないものになってしまうというか。そ
れは、僕らが作ろうとしている音楽とはちょっと離れてるんですよね。僕らはなるべく
間口の広い音楽がいいと思っているので。で、結果として、それがみなさんの側にある
ものになったらいいなぁっていう。
吉岡 いきものがかりの始まりとして、路上ライブがやっぱり大きな存在なんですよね
。歩いている人たちに立ち止まってもらうにはどうすればいいんだろう、年齢問わず共
感してもらうためにはどうしたらいいんだろうっていう考えがバンドの根幹にはズドー
ンとあって、そこは今でもまったく変わってないんですよ。で、そこを軸にした上で、
自分の気持ちを曲に出すにしても、自分だけのことにとどまらないようにって意識して
書いていく。曲を狭いものにしたくないっていう気持ちがすごくあるんだと思うんです
よね。
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3人で歌う曲を表立たせたかった
──内容面では、本作は新たなファンを呼び込むのに最適な内容になっていますが、こ
れまでのファンにとってもうれしい楽曲が満載されていますね。まずは、リアレンジ&
再レコーディングされた“2010 version”の「夏・コイ」と「雪やまぬ夜二人」の収録
。
山下 この2曲をリアレンジしたいなっていう意見が一致したんですよね。僕たちには3
人で歌う曲っていうのが何曲かあるんですけど、「夏・コイ」はその代表的な1曲なの
で、これはマストで入れましょうということになって。
──出だしが男性の声っていう部分でビックリする人も多そうですよね。
水野 そうですよね。いきなりですからね(笑)。
山下 昔からやってはいるんですけど、なかなかそれが表立つ機会がなかったんで、今
回はいいタイミングかなって。
──「夏・コイ」をリアレンジするのはこれが2度目でもありますよね。
水野 そうなんですよ。インディーズ時代がオリジナルで、メジャーの1stアルバムの
ときに一度やってるんで。何度がんばるんだっていう(笑)。
吉岡 元々、2人は歌うの好きですからね。もう1回ぐらいがんばるかもね(笑)。
──「雪やまぬ夜二人」に関しては?
山下 いきものがかりって冬の曲があんまりないんですよ、実は。なので、リリース時
期が11月っていうこともあるので、ちょうどいいかなと思って。アレンジは松任谷正隆
さんに「YELL」ぶりに引き受けていただきました。多少クリスマス感を入れてください
っていうリクエストはしましたね。
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「スピリッツ」は自分のために作った曲
──あとは、過去に配信でリリースされた「今走り出せば」と「スピリッツ」が初パッ
ケージ化されています。ファンは喜んでくれますよね、きっと。
山下 けっこう要望もいただいてたんで、やっぱりこのタイミングかなと思って。配信
はフルコーラスではなかったから、ダウンロードしてくれた人でも喜んでくれるかなっ
て。そういう要素はベストアルバムだけど絶対に入れたかったんですよね。位置づけと
してはオリジナルアルバムに近い感覚というか。
吉岡 「今走り出せば」は、ほっち(山下)がすごく得意な感じの曲ですね。メロディ
に対して言葉がぽんぽんはまっていく感じが歌っててもすごく気持ちいいんですよね。
で、「スピリッツ」は、リーダー(水野)の野球熱が爆発した曲(笑)。好きすぎて、
燃えすぎてるよね。
──プロ野球中継のテーマソングになってましたもんね。
水野 聴き手のために音楽を作るっていうのがいきものがかりの軸なんですけど、これ
はもう自分のために作った曲(笑)。何度燃えてるんだっていうぐらい「燃えてる」っ
ていう歌詞を使ってますからね。
吉岡 ディレクターにも「おまえ燃えすぎだろ!」って言われてたし(笑)。
──あはは。で、さらには「風と未来」という新曲も収録されています。この曲のメッ
セージがいいんですよね。ベストを出す今のタイミングで、いきものがかりとしての未
来に向けた意志がしっかり描き出されていて。
山下 ね。書いてるときには意識してないんですけど、次を見ていきましょうっていう
曲なので、確かにそこにひとつ意味がつけられるのかなって気はしますね。
吉岡 今の自分たちに当てはまってるなって思います。だからこれからそういう心持ち
で歌っていくこともできるのかなって思いますね、すごく。
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「いきものばかり2」を出せるようにやっていきたい
──この曲で描かれているような、今現在、思い描いている未来って具体的にあったり
します?
水野 正直、明確に何かビジョンが見えているわけではまったくないんですよ。ただ、
ありきたりなことを言えば、「いきものばかり2」を出せるように次もちゃんとやって
いかなきゃなっていうことぐらいで。続けていくことが一番重要だし、一番困難なこと
だと思うんですよ。いつ終わってもおかしくないっていう危機感は、インディーズ時代
からずっと持っているので。なので、気持ちがブレないまま、いろんな曲を出して、ラ
イブを重ねて、ちゃんと積み重ねていくことが地味だけど大事だし、そうするためには
今後どうしていったらいいのかっていうことを考える時期なのかなとは思ってます。
──取り急ぎ、目の前にはアリーナツアーという初めての経験も控えていますしね。
吉岡 前回の全都道府県ツアーはセットがシンプルで、楽曲を楽しんでもらうっていう
内容だったんですよ。なので、今回は会場も大きくなるし、今まで来てくれた人にも驚
いてほしいっていう気持ちが強くて。ちょっと違うぞってビックリしてもらえるような
……そういうふうにします!(笑)
水野 ホールではできなくて、アリーナではできることっていっぱいあると思うので、
そこにはちゃんと挑戦してみたいなとは思ってます。そういうふうにします!(笑)
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ナタリー - [Power Push] いきものがかり
http://natalie.mu/music/pp/ikimonogakari04
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