[新聞] 黨大會終場rockin'on repo (有圖)
http://ro69.jp/live/detail/92899
椎名林檎 @ Bunkamura オーチャードホール
夢のような時間でありながら、「やばい、置いていかれる」というようなスリリングな
焦燥感を駆り立てられるステージでもあった。11月18日から渋谷のオーチャードホール
にて、全5公演が行われてきた『椎名林檎十五周年 党大会 平成二十五年神山町大会』
のファイナル。ソロのライヴとしてはデビュー十周年の『(生)林檎博’08』以来実に
5年ぶりであり、林檎自身が何度も「皆さんにお会いできて嬉しいです」と言葉にして
いたことや、パフォーマンス内容のプレミアム感(特に演奏のクオリティにおいて)が
相まって、彼女の存在の大きさを改めて知らしめるステージであった。
ステージの幕が開くと同時に、前日に35歳の誕生日を迎えた椎名林檎が、王冠と華やか
なドレスを身に纏い、すすっと優雅な足取りでステージ中央に進み出る。ピアノ×アコ
ーディオンという編成の演奏をバックに、歌われるのは“都合のいい身体”だ。余りに
も上質で劇的なパフォーマンスが、余りにも唐突にスタートしたので、観ていてちょっ
と慌ててしまった。そしてステージ下手のピアノの前に腰掛け、振り向きながら右腕を
掲げて挨拶する林檎。「皆様、党大会へようこそ! いつもは皆さんにビリビリして頂
きたくて、エレキな楽器を使ってきたんですけれど、今日はオーチャードですので、選
りすぐりの首席奏者と共に、生楽器で、いつもより深ぁいところでビリビリして頂きた
いと思います。どうぞ自由に、座って頂いても結構ですし、自由にお楽しみください…
…オーチャードって、どういう意味かご存知ですか? あ、良くご存知ですねえ! 学
がある。私は昨日、ピアノの方に教えて頂いて初めて知りました(笑)……ピッタリで
すよね? 〈果樹園〉です。よろしくお願いします」。そう楽しそうに語り、まだ緊張
感の残っていたホール内を一気に、親密な空気で満たしてしまった。
斎藤ネコらストリングス隊を迎え入れ、林檎自らはピアノを奏でつつ歌う“IT WAS YOU
”。その後にはハッとさせられるようなハープの音色が響く英語詞ヴァージョンの“カ
ーネーション”と、高品質ストリングス・アレンジの映えるナンバーが披露されてゆく
。このスペシャルなアンプラグド・ライヴの深みへと潜行する“カリソメ乙女”では、
原曲のタイムレスな強靭さと、アレンジ/生演奏における一期一会の音楽表現の魅力が
同時に溢れ出すようだった。そしてメロウなジャズで繰り出される“MY FOOLISH HEART
”で柔らかいタッチのビートを刻むのは、林檎を招く形でオリジナル・ヴァージョンを
手掛けたSOIL&”PIMP”SESSIONSからドラマーのみどりんである。更にはウィスパリン
グ・ヴォーカルの《云ったでしょ?「俺を殺して」》が演奏に溶ける“浴室”、このア
ンプラグド編成でまさかの“熱愛発覚中”と、驚けば良いのか酔いしれれば良いのか、
贅沢な悩みに苛まれる時間が続く。
背景のスクリーンには、林檎自身を筆頭にカルテという形で出演者が紹介され、それぞ
れにオーディエンスの拍手が巻き起こる。斎藤ネコ(Violin)、グレート栄田(Violin
)、山田雄司(Viola)、藤森亮一(Cello)、佐藤芳明(Accordion/鍵盤ハーモニカ)
、みどりん(Drums)、鳥越啓介(Contrabass)、朝川朋之(Harp)、林正樹(Piano)
という、マエストロ揃いの顔ぶれだ。林檎作品の数々に携わってきた名前も多く目に付
く。そして林檎が一度ステージから捌けている間には、『噂の真相』と題されたラジオ
番組風のトーク・コーナーが繰り広げられる。ユーモラスにネタも交えて笑いを誘いな
がら、「極秘出産説」については女児を授かったことを改めて報告し、「赤ちゃんのリ
リースとシングルのリリースがバッティングしていたため、新しい命をあたかも宣伝の
ように使うのは嫌でした。それよりも、皆さんに直接お会いしてお伝えしたかった」と
いう言葉が暖かい拍手を呼ぶ。
「人生、辛かったりしょっぱかったり。だからこそ、ときに甘く感じられるのでしょう
か? この党大会は、何党大会なのでしょう。『甘党大会』です!」という宣言と共に
、純白の愛らしい衣装にお色直しした林檎が姿を見せて“二人ぼっち時間”へと向かっ
ていった。“色恋沙汰”では、夕暮れの都市や大海原を駆け抜ける美しい映像とアップ
リフティングなスウィング感が手を取り合う。バンドがフル稼働でドラマティックな高
揚感を形作る“いろはにほへと”では、ガーリーかつコケティッシュなヴォーカルが映
えるなど、何とも華やかな展開だ。栗山千明に提供した“おいしい季節”のセルフ・カ
ヴァーを経ると、静謐なオープニングから壮大に盛り上がってゆく“旬”へ。アダルト
な高級感だけではない、人生の深さ広さ、音楽の深さ広さに手を延ばすような、椎名林
檎の表現者としてのひたむきさが表れたパフォーマンスだ。
“女の子は誰でも”を披露すると再び『噂の真相』コーナーで、会場が大きすぎるとア
ーティストが豆粒に見え、会場が小さすぎるとチケットが取れない、といった会場手配
の苦労が、こちらもユーモラスに伝えられる。アニヴァーサリーの、しかも久々のライ
ヴとなれば、もちろん椎名林檎のロックを思い切りフィジカルに堪能したいという声も
あるだろう。思い悩んだ末に、彼女はこのオーチャードホールで、今の表現者としての
意欲もたっぷり込めて、この洗練された驚きをもたらすライヴを企画したはずだ。“孤
独のあかつき”の後、ヘッドスカーフに大ぶりのサングラス、真っ赤なスカートにハイ
ヒールというレトロな南仏スタイルで、ジプシー・スウィングなアレンジの“都会のマ
ナー”(ともさかりえへの提供曲)をエモーショナルに歌い上げる椎名林檎は、まさに
表現意欲の塊のようだった。
更には新曲“今 (Present)”から、気怠いジャズ・ボッサ風アレンジの“月夜の肖像”
セルフ・カヴァーにかけて、まるで映画の中から抜け出てきたような濃厚なムードを練
り上げる。壮麗なバンド・サウンドを強靭な歌メロが牽引するような“罪と罰”は、言
葉本来の意味での「リード・ヴォーカル」とはこういうものなのではないか、と思うほ
どであった。そしてオーディエンスと共にアーティスト・グッズの旗を振りながらの“
密偵物語”、アコーディオンの音色が新鮮な情感を持ち込む“殺し屋危機一髪”とクラ
イマックスに向かい、「ご清聴ありがとうございました。お会いできて嬉しかったです
。最後の一曲、お聴きください」と、どこまでも味わい深いジャズ・ヴォーカルが余韻
を残す“茎 (STEM)”で本編を締め括るのだった。
アンコールは、ピアノ、コントラバス、ドラムス、そして鍵盤ハーモニカがあのイント
ロ・フレーズをたなびかせるという編成で、“丸の内サディスティック”だ。日本語と
英語が入り混じった、“EXPO Ver.”に近い歌詞で届けられる。丁寧に頭を下げて挨拶
した林檎は、最後の最後に、ピアノの伴奏が寄り添う形で“幸先坂”(真木よう子に提
供したナンバー)を歌った。《人はいつも坂の途中期待を抱え上がり下がり/生きてい
る/夜と昼涙に濡れても/今日は何かいいことがありそう》。まさにデビュー十五周年
に、ファンと共に、その《今日は何かいいことがありそう》を捕まえにいくためのライ
ヴだったように思える。なお、11/28及び29には、ファンクラブ会員限定ライヴ『椎名
林檎十五周年 班大会 平成二十五年浜離宮大会』が行われるが、その29日の模様は、全
国80以上の映画館でライブビューイング公開される予定だ。(小池宏和)
セットリスト
01.都合のいい身体
02.IT WAS YOU
03.カーネーション
04.カリソメ乙女
05.MY FOOLISH HEART
06.浴室
07.熱愛発覚中
08.二人ぼっち時間
09.色恋沙汰
10.いろはにほへと
11.おいしい季節
12.旬
13.女の子は誰でも
14.孤独のあかつき
15.都会のマナー
16.今(Present)※新曲
17.月夜の肖像
18.罪と罰
19.密偵物語
20.殺し屋危機一髪
21.茎
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※ 發信站: 批踢踢實業坊(ptt.cc)
◆ From: 118.167.1.244
推
11/30 09:34, , 1F
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