[新聞] 自問自答を繰り返す小栗旬の飾らない進 …
2008/07/18
「飾らない」。小栗旬と話していてふっと思い浮かぶ形容詞だ。映画、テレビ、舞台に
引っ張りだこで、多忙を極める若手トップ俳優。だが、周囲の声に惑わされることなく
、自らのスタンスを貫いてきた。初めてテレビドラマにレギュラー出演してから10年余
り。さまざまな経験を積んだからこそ抱えるさまざまな悩みと闘いながら、それを糧に
さらなる進化を遂げようとする強い意志がうかがえる。これからの10年、20年先をいか
に見据えているのか? デビューからの軌跡を追いつつ、その魅力に迫った。
シンプルな芝居=原点回帰が今のテーマ
現在、Sky Perfec TV!で「スカパー!小栗旬祭り」が開催されている。これまで出演
した映画、ドラマ25作品に密着ドキュメンタリーなどを加えた1カ月にわたる大特集。
第一線を走り続けているからこその企画だが、今年1~3月に放送された主演ドラマ「
貧乏男子 ボンビーメン」のころから、自身の芝居についてしゅん巡するようになった
という。
「本当に自分の中で、何をしていいのか分からなくなっちゃったんです。何をやっても
正解じゃないしって。正解がないことをやっているのは十分わかっているんですけれど
、少なくともそれまでは自分のやっていることに確かな自信、何かしらの手応えは持っ
ていた。だけど、『ボンビーメン』では1度もそう思えた時がなかった。連続ドラマの
主役という責任もあったかもしれないけれど、こんなに主役が迷っていたら、それを支
えてくれようとしている人たちもどうしていいかわからない。ひたすら悩みましたね」
さまざまなキャラクターを演じてきたがために、入り込んでしまった迷宮。だが、「シ
ンプルに芝居ができなくなっちゃったなあってことが、今の自分のテーマ」と自覚して
もいる。ただひたむきに役と向き合っていた、デビュー当時の気持ちに立ち返ることで
活路を見いだそうと考えたのも、これまでの蓄積があったからこそだ。
内田有紀に会いたいと思い立ち、11歳で児童劇団に応募。人気者になりたい、テレビに
出たいという漠然とした夢を抱きながら、エキストラとして現場で“実地訓練”を積む
一方でオーディションを受け続けた。そして1996年、NHK大河ドラマ「秀吉」で佐吉(
後の石田三成)を演じたのがきっかけで、98年のフジテレビ「GTO」で初の連ドラ・レ
ギュラーを勝ち取る。だが、まだ仕事という意識は希薄だった。
「(収録が高1の)夏休みだったし、ひたすら遊んでいて、現場に行ってセリフを覚え
ていないとか、本番中に寝ちゃうとか……。むちゃくちゃ怒られて、どんどん出番が少
なくなっていったんですよ、最終回に向けて。それがすごく悔しくて。その後、誰から
も誘われなくて仕事がなくなったんです。そういうことをすれば自分に返ってくると知
って、それ以降は芝居に対する向かい方は変わりましたね」
高校の出席日数が足りなくなったため、2年時は学業優先を心がけた。それでも、野球
部の活動以外は友人たちとの遊びに時間を割き、欠席日数がさらに増える悪循環。退学
がほぼ決まった年度末に、不退転の決意で望んだTBS「Summer Snow」のオーディション
に合格する。堂本剛の弟役。人生、どう転ぶかわからない。
「(高2の)1年間で、ドラマに出て調子に乗っていた自分が、普通の高校生なんだっ
てことを知って、背伸びをしてもしようがないことを痛感した。その間にどんどん売れ
ていく窪塚洋介や池内博之を、ただただすごいなと思って見ていた感じですね。『
Summer Snow』は、役柄的にも聴覚障害者だったので、この仕事でつかめなかったらこ
の先はないだろうと思って、すごく一生懸命やりました」
その演技で、一躍注目を浴びる存在に。振り返れば、自分自身を見つめ直す重要な1年
だった。「そうですね。思春期に少年から大人に変わるっていう(笑)」。徳永秀明の
「壊れかけのRadio」の歌詞を引用するあたりも屈託がない。
意外な自覚「顔では勝負ができない」
映画初主演となった02年『羊のうた』では、「いいか悪いか別にして、ひとつの方向し
か見られないし、考え方しかできない。だからこそ100%、役に向かっていた」という
。同時に、役を多角的に分析し始めた時期でもあり、そのきっかけは「顔で勝負ができ
ないと思ったんですよ」と意外な発言だ。
「周りに自分より二枚目がすごく多かったので。だから、芝居をうまくしなきゃとか、
皆とキャラクターを変えなきゃ自分が浮き出てこないってことばかり考えるようになっ
た。それこそ『ごくせん』(02年)では、(松本)潤と成宮(寛貴)は外に出るとキャ
ーキャー言われていたけど、僕が出るとあまり騒がれない。あ、格好いいと言われるタ
イプじゃないんだと思って、だから何でもできる役者にならないと需要がなくなっちゃ
うと19歳ながらに思ったんですね」
そんな思いを根底から覆されたのが、03年の『ロボコン』だろう。高等専門学校の落ち
こぼれ4人組が、自作のロボットで日本一を競う「ロボットコンテスト」に情熱を傾け
る青春映画で、設計担当の航一を演じた。だが、古厩智之監督からは度重なるダメ出し
の洗礼。共演の塚本高史が、ほとんど一発OKになっているだけに、悔しさが募った。
「何がそんなに違うんだろうと、現場ではすごく思いましたね。今思うと、違う角度で
何かをしようと思い始めた最初のころだった。そしたら、古厩さんから『そういうこと
は全部いらない』って言われる。余計な芝居をしようとしているおれを、古厩さんはす
ごく嫌いだったと思う。高史もひとつの方向で芝居をやっている人だったから、そうい
う人間たちを撮りたかったんですよね。ああ、なるほどと思うし、でき上がった作品は
すごくシンプルな芝居ができているから好きなんですよ」
専念したいほどほれ込んでいる舞台
演じるうえで最初は大きなギャップを感じながら苦闘を重ね、いまや自らを成長させる
ためには欠かせない存在となっているのが舞台。世界的演出家の蜷川幸雄には「ハムレ
ット」以降、定期的に起用されるほどになったが、最も大きな影響を受けたのは白井晃
演出の「宇宙でいちばん速い時計」(03年10月3~20日、東京・三軒茶屋シアタートラ
ム)だという。
「蜷川さんとの出会いもむちゃくちゃ大きいけれど、実際、舞台との最初の衝撃的な出
合いは白井さん。感謝のレベルに大きさはないとおもうけれど、一番の感謝は白井さん
と共演した浅野和之さん。いろんなものを頂いたので」
けい古をしていても、「舞台のことをわかっていない」と言われるばかり。理由もわか
らずに試行錯誤を繰り返していたが、初日を迎えた時にある種のひらめきがあったよう
だ。
「もちろん、芝居はへたくそですけど、ちゃんとやってるじゃん。何を言っているんだ
ろう、この人たちはってずっと思っていたけれど、初日の舞台に立ったら『変わった』
って白井さんに言われた。多分、すべての角度から見られていることを意識していない
自分が、皆とは違うところだった。狭い劇場で、ステージに立つと一番前のお客さんと
はこのくらい(約50センチ)の距離。一気に、あ、見られているんだと感じたら、全然
芝居が変わったと言われて。さ細なことですけれど、すごくいい経験になったなあ」
テーブル越しに身振り手振りを交え、きっかけをつかんだ瞬間を再現する。まさに、息
がかかりそうなくらいの間合い。余程、衝撃的だったのだろう。楽しそうに振り返る笑
顔からは、舞台への強い思い愛をひしひしと感じる。「ぶっちゃけ、この先は舞台だけ
でいいやと思っているところもあります」。いやいや、それだけはファンをはじめ周囲
が許さない。勘弁願いたい。
花男、クローズ…“高校生活”気づけば何と10年
そして、「芝居が好きになったというか、芝居をいろいろ考えるようになった」という
この4、5年は、御曹司4人組「F4」の1人に扮したTBS「花より男子」(05、07)が
、最終章となる映画版『花より男子ファイナル』では公開2週目にして興収40億円に迫
る勢いなのをはじめ、映画での転機となったと公言する『隣人13号』やブルーリボン賞
の作品賞に輝いた『キサラギ』など数多くの話題作に出演し、その地位を確固たるもの
にしつつある。それでも、「映画ってまだ知らないんですよ」とさらりと言ってのける
。
古厩智之ら数人を除き、『羊のうた』の花堂純次や『イズ・エー[is A.]』の藤原健一
ら、映画が初めての監督と組むことが多かったのがその理由。中村獅童との“2人1役
”が話題となった『隣人13号』も井上靖雄の初監督作で、刺激を受けたことが「照明待
ちがすごく長かったのでビックリした」と、どこか拍子抜けしてしまうほど自然体で語
る。待望の“映画の現場”が三池崇史監督、『スキヤキ・ウエスタン ジャンゴ』だっ
た。
伊藤英明、佐藤浩市、伊勢谷友介、香川照之、桃井かおりら日本映画界の顔がそろった
異色西部劇。小栗の撮影期間はトータルで10日ほど(うち撮影できたのは3日)だった
が、毎晩のように伊藤、伊勢谷、安藤政信ら一世代上の俳優たち酒をくみ交わした経験
も大きな財産だ。日数的には物足りなさがあっただろうが、すぐに『クローズZERO』で
三池監督と主演でがっぷり四つに組むことになる。しかも、原作を中学生のころから読
んでいたファン。その主人公・坊屋春道に代わり、滝谷源治という映画オリジナルのキ
ャラクターが用意された。
「『ジャンゴ』みたいな世界で、自分が主役をやれたらと思っていたから、うれしかっ
たですね。原作ものを忠実に描くって意外に難しい。逆にうまくいかないことが多いと
思っているので、タイトルを借りてああいう形にして良かったと思いますよ。(原作の
)『クローズ』ファンにはいろいろと言われるだろうと覚悟はしていましたけど(笑)
」
結果、興収25億円を記録。その時点では自身の出演作として、最高のヒットとなり誇ら
しげだ。すでにパート2の製作も決まり、間もなくクランク・インを迎える(公開は09
年)。
ふと、気づけばこの10年余り、ずっと高校生を演じている。「いや、僕にとっては毎回
毎回、違う仕事なので」と苦笑いするが、昨年11月に、番組史上、初めて2回にわたり
特集されたTBS「情報大陸」をあらためてDVD(7月25日発売)を見直して、本人も照れ
ることしきりだ。
「シーンが変わって、次の仕事ってなっても、去年は制服が変わっているだけなんです
よ。うわあ、こいつ高校生ばっかやってるって思いましたけど。まあ、高校生ってでき
なくなったら、どんどん離れていくものだと思うので、できるうちにやらせてもらおう
かなと。でも『クローズ』で終わりでしょうけどね」
見事な1人ノリツッコミで“制服封印宣言”。こうなれば、『クローズ』の長期シリー
ズ化を狙うしかない!?
『クラッシュ』がヒント、そして「意義ある作品選び」へ
原点回帰を意識しながら、さまざまな状況に応じて役者としての感性を磨いてきた。そ
して、迷いを吹っ切り、さらなる前進への大きなヒントとなったのが、アカデミー賞の
作品・脚本・編集賞を受賞したポール・ハギス監督・脚本の『クラッシュ』。クリスマ
ス間近のロサンゼルスを舞台に、さまざまな人種の人々による衝突を同じ時間軸で描い
た群像ドラマ。1年ほど前から、ストレス発散法にしているDVDの衝動買いで選び、「
見なきゃいけないリスト」の優先作品になっていた1本だ。
「何もしなくていいんだ。ちゃんとお客さんが見ている状況で事象が起こり、それに対
してシンプルに反応している人間たちがいれば、芝居ってそれでいいんだと。舞台にな
ったらもっとつくり込まなきゃいけない部分もあるけれど、映像の世界ではああいうラ
イブ感みたいなものがいいんだよなあ。どれだけ、余計なことをやろうとし続けていた
んだろう、と思いました」
仕事選びに関しても変化の兆候が見え始めた。一緒に仕事したい監督として、原田眞人
、阪本順治、黒沢清の名前が挙がったのもその表れだ。
「今までは、来た仕事を全部やっていたんですけれど、これからはなぜ自分がやるのか
という意義のある作品を選んでいきたい。役を頂いて、何でもいいからってやっている
と、宣伝のときにあまり言うことがないんです。これからは、自分がその役をやること
でどんなチャレンジになったのかってことをちゃんと言えるようにしたい。俳優って何
? と言われたら、よくわからない職業だと思うし、需要がないと生まれないものだか
ら、できる限り多くの人が喜んでくれる作品に携わっていたい」
穏やかで、本当に飾らない姿勢や語り口のなかにも、確固たる目標をとらえた前向きさ
が伝わってくる。旬でいながらも、どこかに普遍を求めているかのようだ。『クローズ
ZERO』続編に続き、来年には蜷川の舞台で、佐々木小次郎を演じる「ムサシ」が控える
。大きな壁を乗り越えようとしている小栗の動向から、ますます目が離せなくなってき
た。
http://www.varietyjapan.com/interview/oguri_p01.html
http://www.varietyjapan.com/interview/oguri_p02.html
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◢██ ◣ ◢◣ ψTwintail
◢ ▲ ◥◥█▊ ◣ 冬風無語輕撥晚鐘 是誰~淚眼朦朧 ◣
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※ 編輯: keitaandwing 來自: 59.124.99.126 (07/22 09:41)
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