[新聞]「犬神家の一族」 (角川ヘラルド映画ほか)
30年前の華麗さ再び
犬神家の遺産争いに巻き込まれた珠世(松嶋菜々子、中央)の危機に、
探偵の金田一(石坂浩二、左)が駆けつける 丁寧に映画を撮る、
ということは、こういうことなのだろう。
(犬神家の遺産争いに巻き込まれた珠世(松嶋菜々子、中央)の危機に、
探偵の金田一(石坂浩二、左)が駆けつける 寫真=>http://0rz.tw/a82fw)
91歳になる市川崑監督が、30年前のヒット作を自ら監督した意図は、
画面を見れば、おのずと分かる。
あの華麗な画面を、今、再現するには、
それ相応の技量と美的センスが不可欠なのだ。
それを請け負った名匠の覚悟を感じた。
横溝正史の推理小説を原作にした物語は、前作とほぼ同じ。犬神財閥の創始者、
犬神佐兵衛(仲代達矢)が亡くなり、多額の遺産を恩人の孫娘、
珠世(松嶋菜々子)に譲る、という遺言が残される。
その内容に不満な3人の娘と子供たちの愛憎がからみ、連続殺人事件が起こる。
既視感は否定できない。3姉妹は前作から一新し、
富司純子、松坂慶子、萬田久子が好演しているが、
ぼさぼさ頭の石坂浩二の金田一耕助や「よし、分かった」
が口癖の加藤武は異動なし。
カメラアングルやカット割りが変わらぬ場面も少なくない。
前作で強烈な印象を残した、菊人形の首が生首にすげかえられ、
2本足が湖面から突き出しているなどのショッキングな場面も、
そのまま残された。
画面の陰影はさらに増し、格調の高さは最近の日本映画では群を抜く。
おどろおどろしい横溝作品の世界を作り上げるには、
CGよりも、手業の方がふさわしい。光と影を操る至芸を味わった。
2時間14分。有楽座など。(近藤孝)
(2006年12月15日 読売新聞)
http://www.yomiuri.co.jp/entertainment/cinema/review/20061215et0a.htm
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