[新聞] 「いい人」に収まらぬ存在感 「怪談 牡丹燈籠」で初舞台
22日の昼前、東京都内のとあるけいこ場。前庭で、長身の青年が空を見上げていた
。「すごいですね」。厚い雲越しに日食を垣間見た感動を語る姿は、無邪気な少年のよ
うだ。
撮影で訪れた別の日は猛暑だった。けいこ着の浴衣で現れた彼は、汗だくのカメラマ
ンに「暑いですよね」と声をかけると、スッと窓をあけてくれた。
こまやかな思いやり。好奇心に輝く瞳。ほんの数分接しただけで、演じてきた役を裏
切らない、いやそれ以上に魅力的な人だ、と実感させられた。
昨年、ドラマ「ラスト・フレンズ」のタケル役や大河ドラマ「篤姫」の小松帯刀役で
大ブレーク。今年は「余命1ケ月の花嫁」など3本の出演映画が立て続けに公開された
。
多忙を極める人気俳優の次なる挑戦は初めての舞台だ。「怪談 牡丹燈籠(ぼたんど
うろう)」で、浪人の萩原新三郎を演じる。旗本の娘・お露(柴本幸)との恋の因果が
周りの人々の運命も狂わせてゆく。新三郎は、限られた出番でお露との複雑な関係を描
きださねばならない難役でもある。
「役が場面の中で意味を持って存在しているか。感情がきちんと出ているか。そして
台本を忠実に表現できているか。どこまでできるかわからないが、新三郎の様々な面を
伝えたい」
1カ月以上にわたる長いけいこも初体験。演出のいのうえひでのり、共演の段田安則
や伊藤蘭ら、先輩から学ぶことが多いという。「色々と助けてもらいながら、俳優とし
て原点回帰できる場だと感じています」
けいこ場の最前列の席を確保し、自分の出番以外は段田らベテランの精妙な演技に目
を凝らす。「僕の後ろが伊藤さん。席を替わらなくちゃと思いながら、見とれて動けな
い」。愛読する村上春樹の新作「1Q84」も上巻の25ページまでで中断し、けいこ
に集中する日々だ。
「与えられた作品や役に純粋な興味を持ち、演じることを全力で楽しむ。それができ
るのがプロの俳優だと思います」
「草食系男子」の印象が強いが、サッカーで鍛えた身体と凜(りん)とした眼光は「
いい人」に収まらない存在感をたたえる。
「時代劇で剣豪を演じてみたい。日本の俳優ならではの役ですから」。豊かな天分に
加え、研究熱心で努力家。これからも新たな瑛太に出会えそうだ。(文・藤谷浩二 写
真・門間新弥)
◇
えいた 82年、東京生まれ。ドラマ「ヴォイス」、映画「ディア・ドクター」「ガ
マの油」など。シス・カンパニー公演「怪談 牡丹燈籠」は8月6~31日、東京・渋
谷のシアターコクーン。
「朝日新聞Beイブニング」今天朝日晚報的報導
http://www.asahi.com/showbiz/stage/theater/TKY200907310317.html
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